どこよりも詳しく説明!就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?

どこよりも詳しく説明!就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?

日本人にはなじみがないかもしれませんが、日本にいる外国人は日本で好き勝手に就労することはできません。

それは日本人は法律で就労の自由が保障されているのに対して、外国人には就労の自由が保障されていないからです。外国人の就労を規制する法律として出入国管理及び難民認定法があります。この法律では在留資格(ビザ)ごとに異なった規制をしておりますが、この規制を考えるうえで重要な要素が2つあります。

それは、「上陸許可基準」と「在留資格該当性」の2つです。

日本の企業が外国人を雇用するには、この「上陸許可基準」と「在留資格該当性」という2つの要素をまずは理解しなければなりません。

注意事項について

技術・人文知識・国際業務について

このページでは就労ビザの一つである「技術・人文知識・国際業務」について説明します。

まず最初に、技術・人文知識・国際業務の活動に該当する場合でも、その活動が「教授」,「芸術」,「報道」,「経営・管理」,「法律・会計業務」,「医療」,「研究」,「教育」,「企業内転勤」,「介護」,「興業」のいずれかに該当する場合は技術・人文知識・国際業務の活動には該当しません。

申請書類の提出先は法務省の外局である出入国在留管理庁(地方出入国在留管理局)です。審査期間は申請してから約2~3ヶ月かかります。

必要書類一覧

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?2

技術・人文知識・国際業務に変更するために大事なポイントはこれだ!

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?3

技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)

技術・人文知識・国際業務の上陸許可基準

申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第五十八条の二に規定する国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

在留資格該当性

外国人が技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)を取得するためには、まずは上記の在留資格該当性と上陸許可基準などを満たさなければなりません。

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?4

最初は在留資格該当性についてです。

技術・人文知識・国際業務はそれぞれ、「技術」・「人文知識」・「国際業務」の3つのカテゴリーに分けることができますが、全てのカテゴリーに共通するものとして、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」というものがあります。本邦の公私の機関とは、国や地方公共団体又は日本の企業などを指し、技術・人文知識・国際業務ではこれらの機関と雇用契約等を結ぶことを前提としております。

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?5-1

在留資格(ビザ)企業内転勤との違いについて

最初に本邦の公私の機関について説明します。本邦の公私の機関には適正性、安定性、継続性の3つが重要なポイントになります。

技術・人文知識・国際業務は短期間の就労を目的としたものではなく、1年、3年、5年という中長期の在留を目的としているため、就労先である機関(所属機関)にも適正性、安定性、継続性などの要件を求めております。

適正性とは、例えば許認可が必要な業種であれば許認可をとっていることや違法及び不法行為等を行っていないことなどがあげられます。国や地方公共団体にはまずないと思いますが、民間の会社の場合などは、申請人が適正性をしっかり見極めたうえで、就労するかどうか決めたほうがいいでしょう。また、適正性だけでなく、赤字決算を続けているような会社には外国人を雇用する余裕などないと判断されることもあるので、所属機関に安定性や継続性があるかなども判断材料にしたほうがいいといえます。

また、契約には雇用のほか委任、委託、嘱託等が含まれますが、短期・短時間ではなく継続的なものが求められます。業務委託契約や派遣契約も実務上契約に該当しますが、許可の可能性でいうと雇用契約に比べ低くなります。これは雇用契約よりも継続して活動できる可能性が低く見積もられるためです。同様にパートや副業など短時間労働も正社員雇用より難しくなります。派遣の場合だと雇用契約は派遣元になりますが、在留資格該当性の判断は派遣先になります。

そして、本邦の公私の機関で行う業務は下記の3つのカテゴリーに分類できます。申請人はこれらのうち、いずれかの業務に従事する活動をしなければ技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性を満たせません。

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?6

技術⇒・理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務
人文知識⇒・法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務
国際業務⇒・外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?7

理学、工学その他の自然科学の分野とは

理学、工学その他の自然科学の分野とは技術・人文知識・国際業務の技術に該当し、仕事内容としてはシステムエンジニア、プログラマー、精密機械の設計・開発等の専門知識や技術が必要な業務が該当します。機械工学の分野でいえば、単に機械の組立て作業に従事する活動は認められず、機械を設計し、あるいはその組立てを指揮する活動などが技術に該当するとされています。具体的には以下の分野などに属する技術若しくは知識を要する業務となります。

数理科学,物理科学,化学,生物科学,人類学,地質科学,地理学,地球物理学,科学教育,統計学,情報学,核科学,基礎工学,応用物理学,機械工学,電気工学,電子工学,情報工学,土木工学,建築学,金属工学,応用化学,資源開発工学,造船学,計測・制御工学,化学工学,航空宇宙工学,原子力工学,経営工学,農学,農芸化学,林学,水産学,農業経済学,農業工学,畜産学,獣医学,蚕糸学,家政学,地域農学,農業総合科学,生理科学,病理科学,内科系科学,外科系科学,社会医学,歯科学,薬科学

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?8

法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野とは

法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野とは技術・人文知識・国際業務の人文知識に該当し、仕事内容としては経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の専門知識や技術が必要な業務が該当します。具体的には以下の分野などに属する技術若しくは知識を要する業務となります。

語学,文学,哲学,教育学(体育学を含む。),心理学,社会学,歴史学,地域研究,基礎法学,公法学,国際関係法学,民事法学,刑事法学,社会法学,政治学,経済理論,経済政策,国際経済,経済史,財政学・金融論,商学,経営学,会計学,経済統計学

一般的には自然科学の分野は理系、人文科学の分野は文系、また、技術・人文知識・国際業務で振り分けると、技術は理系、人文知識・国際業務は文系になるかと思います。

つまり、理系や文系の専門的な知識や技術を活かした業務でないと技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性は満たさないということになります。これらの業務は学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であることを示すものであり、例えば、知識でいうと単に経験を積んだことにより得られる知識などでは認められません。あくまで、学問的や体系的で得た知識を必要とするものでなければなりません。とはいっても、申請人の非代替性までは求められておらず、当該業務の遂行にはそれなりの知識やスキルが必要なこと、また、その知識やスキルをどこでどのくらい身につけたのかを立証することで許可の可能性は十分にあります。

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?9

外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動とは

外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務とは、いわゆる外国人特有の感性であって一般の日本人が有していない思考方法や感受性を必要とする業務を意味し、外国の社会、歴史、文化で培われた思考や感性を元にした一定水準以上の能力を必要とするもでなければなりません。難しい表現を使っていますが、簡単にいうと外国人が本国で培ったスキルや経験を活かした業務と思って頂ければよろしいかと思います。

また、外国人特有の感性であって一般の日本人が有していない思考方法や感受性を必要とする業務と書いてありますが、実務上はそれほどハードルは高くなく、例えばデザイナーであれば本国での実務経験を通して、その関連する業務を日本で行うのであれば、外国人特有の感性を必要とする業務と認められます。日本人では絶対に身につけられないような特別なものまでは求められておりません。外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務については上陸許可基準に記載されております。

【国際業務の例】
通訳・翻訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務

上陸許可基準

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?11

次に上陸許可基準についてです。

上陸許可基準はまずは、「自然科学の分野及び人文科学の分野」と「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」の2つに分けて考えます。(※ただし、IT技術者に関してはIT技術者の円滑な受入れを図る観点から、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格又は資格を有する者は下記の学歴や実務経験などの要件に適合することを要しないとされています)

IT技術者の資格一覧

自然科学の分野及び人文科学の分野

まずは、自然科学の分野及び人文科学の分野の上陸基準を見てみます。以下のどれかに該当しなければなりません。

申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合

  • 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
  • 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(※)(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)
  • 十年以上の実務経験

※ 専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)⇒分かりやすくいうと専門学校は専修学校の一つです。そして、法務大臣が告示をもって定める要件とは専門士や高度専門士の称号を得ることです。専門士の称号は一般的に専門学校で2年以上修業すると得られます。

よって、上陸許可基準は専門学校の卒業と専門士の称号の付与又は高度専門士の称号を付与された留学生が対象となります。ここでは、本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)を以後、「専門学校卒」と記載します。

在留資格該当性のところで理系や文系の知識や技術を活かした業務でないと技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性は満たさないと書きましたが、上陸許可基準ではこの知識や技術の根拠を規制しています。

つまり、在留資格該当性の理系や文系の知識や技術を活かした業務を行うためには、その前段階として学問的な学習や実務としての経験をしっかりしてきてくださいねということを求めております。

そして、この学習や経験はある一定以上のレベルが求められており、学歴に関しては大学等の卒業又は専門学校の卒業、経験は10年以上の実務経験が求められております。(実務経験には大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専門学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間を含みます。)

つまり、大学や、専門学校等で学んだ知識や経験(上陸許可基準)とこれから雇用される所属機関の業務(在留資格該当性)との関連性が求められています。この関連性があるか・ないかの見極めが、技術・人文知識・国際業務の最も重要なポイントとなります。

ここで入管(出入国在留管理庁)から提供されているの許可・不許可事例を見てみましょう。

許可事例

  • 大学の工学部を卒業した者が、電機製品の製造を業務内容とする企業との契約に基づき、技術開発業務に従事するもの⇒大学の工学部卒(上陸許可基準)と電気製品の技術開発(在留資格該当性(理学、工学その他の自然科学の分野))に関連性があるから許可
  • 日本の専門学校のマンガ・アニメーション科において、ゲーム理論、CG、プログラミング等を履行し卒業した者(専門士の称号を付与された留学生)が、本邦のコンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、ゲーム開発業務に従事するもの⇒日本の専門学校のマンガ・アニメーション科卒(上陸許可基準)とゲーム開発業務(在留資格該当性(理学、工学その他の自然科学の分野))に関連性があるから許可

不許可事例

  • 大学の教育学部を卒業した者から、弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され、弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが、当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの⇒大学の教育学部卒は上陸許可基準を満たすが、弁当の箱詰め作業は在留資格該当性として認められないため不許可
  • 専門学校の国際ビジネス学科において、経営戦略、貿易実務、政治経済、国際関係論等を履修した者が、同国人アルバイトが多数勤務する運送会社において、同国人アルバイト指導のための翻訳・通訳業務及び労務管理を行うとして申請があったが、教育及び翻訳・通訳業務と専攻した科目との関連性が認められず不許可⇒専門学校の国際ビジネス学科卒は上陸許可基準を満たすが、履修科目(経営戦略、貿易実務、政治経済、国際関係論等)と、業務(教育及び翻訳・通訳)の関連性が認められないため不許可

外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務

続いて「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」の上陸許可基準を見てみましょう。自然科学の分野及び人文科学の分野と違うのは以下の全てに該当しなければなりません。

  • 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
  • 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。

つまり、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務では基本的には3年以上の実務経験が必要だということになります。この実務経験は関連する業務についてのもので足り、外国人が従事しようとしている業務そのものの実務経験までは求められていません。例外として、大学卒業者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合のみ実務経験は免除されます。専門学校卒だとこの実務経験は免除されないので注意が必要です。

語学の指導は在留資格(ビザ)教育に該当するのか?

就労ビザの技術・人文知識・国際業務とは?12

ここで、大学や専門学校について少しだけ触れます。

技術・人文知識・国際業務では大学や専門学校での学習過程が重要なポイントとなります。単に大学や専門学校を卒業すればいいというわけではなく、所属機関の業務と関連するか、学科の成績や出席状況なども重視されます。

また、大学と専門学校ではそもそも設置目的が異なります。これは大学が学問研究などを目的に作られたものであるのに対して、専門学校は特定の職業に就くために学習する機関であるからです。よって、実務上は同じ経営学について学んでも、大学卒は広く在留資格該当性が認められるのに対して、専門学校卒の場合は細かい関連性まで求められる場合があります。

例えば、翻訳、通訳に関しては大学卒では実務経験なしでいいのに対して、専門卒では実務経験が3年以上必要になります。仮に実務経験なしの専門学校卒で、翻訳、通訳をする場合は国際業務ではなく技術や人文知識で履修した科目と業務との関連性を洗い出さなければなりません。

またそれに加えて、実際に翻訳、通訳をできる実力が本人にあるのか、所属機関に翻訳、通訳を必要とする十分な業務量があるのかなど大学卒と比べて慎重に審査されることとなります。それ以外にも、大学の場合は日本の大学だけなく、外国人の母国の大学(日本政府に大学と認められていないものもありますが・・・))卒でも問題ありませんが、専門学校の場合は日本の専門学校に限定されている点に注意してください。

許可事例

  • 大学の経営学部を卒業した者が、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、翻訳・通訳に関する業務に従事するもの⇒大学の経営学部卒(上陸許可基準)と翻訳・通訳(在留資格該当性(外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務))に関連性があるから許可
  • 専門学校の翻訳、通訳学科において、通訳概論、言語論、通訳演習、通訳実務、翻訳技法等を専攻科目として履修した者が、出版社において出版物の翻訳を行うもの

不許可事例

  • 日本の専門学校のジュエリーデザイン科を卒業した者が、本邦のコンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、外国人客からの相談対応、通訳や翻訳に関する業務に従事するとして申請があったが、専攻した科目との関連性が認められず不許可⇒専門学校卒(上陸許可基準)の場合は翻訳・通訳(在留資格該当性)をするには3年以上の実務経験が必要。また、ジュエリーデザイン科とコンピュータ関連サービス業務に関連性がないため不許可
  • 専門学校における出席率が70%である者について、出席率の低さについて理由を求めたところ、病気による欠席であるとの説明がなされたが、学校の欠席期間に資格外活動に従事していたことが判明し不許可

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

以上、自然科学の分野及び人文科学の分野又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務の上陸許可基準について説明しましたが、それぞれの上陸許可基準に共通して、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることというものがあります。

これは外国人を安い労働力と見なすのではなく、日本人と同様の賃金を支払い、納税や保険加入なども日本人と同じように扱うという趣旨が含まれているとされております。報酬には通勤手当、扶養手当、住宅手当等(課税対象となるものを除く)は含みません。

不許可事例

  • 大学の工学部を卒業した者から、コンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、月額13万5千円の報酬を受けて、エンジニア業務に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから、報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可

その他重要事項について

いかがでしたか?外国人の在留資格(ビザ)を考えるうえで、在留資格該当性と上陸許可基準という要素が重要だと分かっていただけましたでしょうか?しかし、在留資格該当性と上陸許可基準を満たしたからといって、全て許可になるわけはありません。次からは在留資格該当性と上陸許可基準以外の重要な要素についても説明したいと思います。

在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン

技術・人文知識・国際業務などの就労資格への変更・更新手続きに関するガイドラインからの抜粋です。ここでは、在留資格該当性と上陸許可基準以外にも以下のような要素が審査に影響するとされております。

  • 素行が不良でない(留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン)
  • 入管法の届出等の義務を履行(留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン)
  • 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有する
  • 雇用・労働条件が適正
  • 納税義務を履行
  • 所属機関に適度な業務量がある
  • 単純労働ではない

素行が不良でない

素行が不良でないこととは、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為や不法就労のあっせんなど看過することができない行為を行った場合などがあげられます。例えば留学生がアルバイトの法定労働時間を明らかに超えた場合などは退去強制事由に該当するため技術・人文知識・国際業務への在留資格(ビザ)変更が認められないケースがあります。

入管法の届出等の義務を履行

入管法の届出等の義務を履行に関しては在留カード記載の届出事項(名前や住所が変わった場合など)、所属機関等に関する届出、在留カードの有効期間更新、再交付申請など外国人に義務付けられている各種届出義務を履行していることが必要です。

独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有する

独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有することとは、独立した生活が送れるだけの収入や預貯金があるかどうかです。例えば生活保護などを受給して、独立して生計を立てることが見込まれないのであれば、消極的な要素として評価される場合があります。

雇用・労働条件が適正

雇用・労働条件が適正であるかについては、雇用主と外国人で結ばれる労働契約の適法性について審査されます。具体的には最低時給や残業代、有給休暇など、労働者が不利になるような条件は審査に影響する場合があります。また、就労期間についても、そもそも在留活動が継続して行われることが見込まれる必要があるため、あまりに短い期間での労働契約では技術・人文知識・国際業務の趣旨に反してしまう可能性もあります。

納税義務を履行

納税義務を履行とは各種税金の支払いができているかが審査されます。支払いができていない場合は消極的な要素として評価されます。

所属機関に適度な業務量がある

外国人が従事する一定水準以上の専門的業務が所属機関に確保されているかが必要になります。⇒1日換算したら、1日のほとんどが専門的業務ではないと判断されたら許可の可能性は低くなります。

単純労働ではない

一般的に採用基準が未経験可だったり、学歴又は実務経験に係る要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は対象となりません⇒その仕事が簡単にできるものでないことが重要となります。

不許可事例(素行が不良でない)

商学部を卒業した者から、貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき、海外取引業務に従事するとして申請があったが、申請人は「留学」の在留資格で在留中、1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが今次申請において明らかとなり、資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから、その在留状況が良好であるとは認められず、不許可

不許可事例(所属機関に適度な業務量がある)

専門学校の情報システム工学科を卒業した者から、本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき、月額25万円の報酬を受けてコンピューターによる会社の会計管理(売上、仕入、経費等)、労務管理、顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが、会計管理及び労務管理については、従業員が12名という会社の規模から、それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと、顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可

不許可事例(単純労働ではない)

ベンチャービジネス学科を卒業した者から、本邦のバイクの修理・改造、バイク関連の輸出入を業務内容とする企業との契約に基づき、月額19万円の報酬を受けて、バイクの修理・改造に関する業務に従事するとして申請があったが、その具体的な内容は、フレームの修理やパンクしたタイヤの付け替え等であり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可

在留資格該当性の全体的判断

所属機関の業務が技術・人文知識・国際業務に該当しない業務が含まれる場合であっても、それをもって直ちに不許可となるわけではありません。在留資格該当性は一部分で判断するのではなく在留期間中の活動を全体として捉えて判断するといわれています。例えば1日8時間の労働時間のうち1時間程度、現業業務に従事しなければならない日があっても、その他の時間は一定水準以上の専門性のある業務に従事しているのであれば、在留資格該当性があると判断されます。

許可事例

ホテルのフロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり、急遽、宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合など

逆に、技術・人文知識・国際業務に該当すると認められる活動が、活動全体として見ればごく一部であり、活動のほとんどが技術・人文知識・国際業務に該当すると認められないような業務、すなわち上記に記載した単純作業などに該当する場合は技術・人文知識・国際業務に該当しないと判断されます。

不許可事例

  • 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与された者が、本邦のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可
  • ビルメンテナンス会社において、将来受入れる予定の外国人従業員への対応として、通訳業務、技術指導業務に従事するとして申請があったが、将来の受入れ予定について何ら具体化しておらず、受入れ開始までの間については、研修を兼ねた清掃業務に従事するとして申請があり、当該業務が「技術・人文知識・国際業務」にいずれにも当たらないため不許可

留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン

技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)では一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められませんが、ある一定以上の要件が加われれば、これらの活動もできるようになります。

分かりやすくいうと、技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)では飲食店での接客業務、工場でのライン作業、コンビニでの接客業務、ドライバーなどは原則認められていないのですが、下記の要件を満たせば行うことができるようになるということです。とはいっても、要件は厳しいのでほとんどの留学生は該当しません。エリート留学生のためのビザと考えて頂ければと思います。

要件1 学歴について

日本の4年制大学の卒業及び大学院を修了していること⇒専門学校卒では要件を満たせません。

要件2 日本語能力について

ア 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する方が対象⇒日本語能力試験にはN1~N5までのレベルがあり、N1は最上位のレベルのことです。日本人にとっての英検1級みたいなものでしょうか。N1の合格率は約30%です。

イ その他、大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した方についてはアを満たす者として取り扱う

要件3 日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務について

日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務とは、単に雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず、いわゆる「翻訳・通訳」の要素ある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。

要件4 本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用能力等を活用するものと認められること

従事しようとする業務内容に、技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること、又は、今後当該業務に従事することが見込まれることを意味します。

具体的な活動例

ア 飲食店に採用され、店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含む)※厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。

イ 工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対して外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの※ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。

ウ 小売店において、仕入れや商品企画等と併せ、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客販売業務を行うことを含む。)※商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。

エ ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業を行うものや、外国人客への通訳(案内)、他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含む)※客室の清掃にのみ従事することは認められません。

オ タクシー会社に採用され、観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ、自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(それに併せて、通常のタクシードライバーとして乗務することを含む)※車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。

カ 介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り、介護業務に従事するもの※施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

要件5 契約形態等

この留学生の就職支援に係る特定活動の在留資格(ビザ)は申請内容に基づき、活動内容ごとに「指定する活動」として活動先機関が指定されますので、転職等で活動先機関が変更になった場合は在留資格変更許可申請が必要になります。また、法律上資格を有する方が行う業務や風俗関係業務に従事することは認められないほか、活動先機関の常勤の職員として行う活動であるため、短時間のパートやアルバイトは対象になりません。

要件6 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

技術・人文知識・国際業務よりも細かく判断されます。一定の報酬額を基準として一律に判断するのではなく、同種の業務に従事する日本人と同等額以上であるか、また他の企業の同種の業務に従事する者の賃金を参考にします。また、本制度の場合、昇給面を含めて、日本人大卒者、院卒者の賃金を参考とし、その他留学生が実務経験を積んでいる場合は、その経験が報酬に反映されているかなども確認する場合があります。

要件7 その他

ア 素行が不良でないこと

イ 入管法に定める届出等の義務を履行していること

家族の滞在について、留学生の就職支援に係る特定活動の在留資格(ビザ)を与えられた者の扶養を受ける配偶者又は子については特定活動(本邦大学卒業者の配偶者等)の在留資格(ビザ)で日常的な活動が認められます。

就職活動を目的とする在留資格「留学」から「特定活動」への変更について

留学生が在学中に就労先を見つけて、卒業のタイミングで留学から技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)に変更できるのが理想ですが、留学生の中には在学中に希望の就労先を見つめることができない場合があります。その場合、本人が希望するなら卒業後も就職活動をできるようにしたのが、この就職活動を目的とした特定活動の在留資格(ビザ)です。

就職活動を目的とした特定活動の在留資格(ビザ)は本人が卒業前及び卒業後も熱心に就職活動をすることを目的とした在留資格(ビザ)になるので、就職活動をしたことがわかる資料や学校側からの推薦状が必要になります。

この特定活動の在留期間は6ヶ月が多く、1回の更新が認められるため、最長1年間は就職活動ができるようになります。また、この期間に資格外活動許可を取ればアルバイトをすることも認められます。

地方公共団体が実施する就職支援事業への参加

就職活動を目的とした特定活動の在留資格(ビザ)では、卒業後最長1年間は就職活動ができると記載しましたが、例外として卒業2年目の就職活動にも触れておきたいと思います。それは地方公共団体が実施する就職支援事業についてです。就職活動を目的とした特定活動の在留資格(ビザ)で継続した就職活動をしていた者が、地方公共団体が実施する就職支援事業の対象となり、証明書の発行を受け、当該事業のインターンシップへの参加を含む就職活動を希望する場合は、就職活動を目的とする在留資格「留学」から「特定活動」へ変更した際の最長1年に加えて、もう1年日本に在留することが可能になります。

就職内定者が採用までに在留するための特定活動

次に就職内定者が採用までに在留するための特定活動について説明いたします。就職活動を目的とした特定活動の在留資格(ビザ)での在留期間中に就職先は内定したが、採用されるまでに時間がかかるケースが想定されます。例えば、2020年3月に大学を卒業した留学生が4月に就職活動を目的とした特定活動に変更後、就職活動をして12月に内定を得たとします。本来ならこの特定活動の期限は最長1年なので2021年3月までになります。

しかし、会社の都合上、実際に雇用されるのが2021年4月以降だったらどうでしょう。このように在留期間が経過してしまう際などに、就職内定者が採用までに在留するための特定活動許可を得ることで、採用までの間滞在することを可能にします。ただし、内定後1年以内であって卒業後1年6ヶ月を超えない期間に限ります。

あとがき

以上、技術・人文知識・国際業務に関連することついて、できる限りの内容を説明いたしました。

在留資格(ビザ)の手続きは絶対許可がとれるといった代物ではありません。しかし、ここで学んだ知識を活かして許可の可能性を上げることはもちろん可能です。

当事務所では、技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)の手続きについて十分なノウハウを持っております。

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このページでは下記を参考及び引用いたしております。
引用 出入国管理関係法令等
引用 在留資格関係公表資料
引用 入管法の実務 新日本法規 山脇康嗣
引用 入国・在留審査要領

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